2017年大法官(憲法裁判所)の判断に基づく台湾の“同性婚法”は、去る5月24日、遂に施行を迎えました。民法の婚姻とは一線を画した特別法として決議・施行されたこの法律は、男女と“平等”な同性の婚姻を求める当事者には、完全に満足のいくものにはなりませんでした。しかしそれでも、アジアで初めて同性カップルの法的保障を国レベルで実現した点で、画期的なものです。
この特別法で、男女の婚姻に比して「不十分な」点には、下記のような、当事者にとっては見過ごせない点がいくつかあります。(詳細は記事を参照)
- 婚姻後に、カップル内のひとりに実子が生まれても、他方の配偶者の実子とは認められず、養子でしか共同親権を確立できない
- 同性婚未成立国の国民との同性婚はできない(台湾人は、例えば日本人とは同性婚出来ない)
上記のような、男女の婚姻に比して不平等な点に関しては、これからも台湾のLGBTコミュニティによる戦いが続く可能性を、明治大学鈴木教授は指摘しています。
今回の顛末を振り返ってわが国にとって重要な点は、反対派の巻き返しや立法院(国会に相当)での法案提出・決議をめぐるゴタゴタから分かるように、同性婚という、少数派の権利や人権を保障するテーマにおいては、多数決による民主主義という手法が必ずしも機能しなかった、という点です。司法が憲法の原則に則って、2017年の判断を下していなければ、今回の不十分な同性婚特別法さえ成立しなかった可能性が、国民投票での反対派提案への支持の高さにも見て取れます。
今年2月に提訴された日本での同性婚集団訴訟に対して、日本の司法が三権分立上の役目を十分に認識し、憲法の原理を尊重した判断を下してくれることを、切に望むものです。
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